【邦画】いま話題の青春映画「故郷の詩」の濃密さ

故郷の詩のポスター

「故郷の詩」日本の青春映画の帰着

国内外の様々な映画賞をとり、最近ではYahoo!ニュースに取り上げられるなど、いま話題の青春映画、「故郷の詩」。一日一本は映画作品を観てらっしゃる、銀杏boyzの峯田さんをして「永遠に語り継ぐべき最高の青春映画」と言わしめた傑作です。 私が足を運んだのは、初日公演(2014年10月18日)の時でした。超満員の観客の期待を裏切らず、大変おもしろい作品でした。暴力、性愛、苦悩、自棄、過去の清算と卒業。 特殊な演出は最小限にとどめられ、どうしようもない若者たちを描くために必要なエッセンスが濃密に詰めこまれた、正統の青春映画であると感じました。 日本の青春映画の1つの帰着点といっても決して大げさではないと思います。70分強の映画作品とは思えない充実感を覚えることができました。

あらすじ

埼玉県の郊外にある、熊本県出身者のみの学生寮「有斐学舎」を舞台に、スタントマンを目指す大吉と、映画監督を目指す天志の青春群像が描かれます。 大吉は焼酎10杯一気飲みなど、体を張った無茶なスタントを武器に映像を撮りためますが、学生時代の4年間を通じ、成長がなく、相棒の撮影監督の天志に「4年間お前を撮っとったけど、映画の1つもできんかったじゃにゃーにゃ!(熊本弁)」と言われてしまいます。また、その天志も、株の必勝法を売る怪しいセミナー講師に騙され、寮内での立場や自信を失ってしまいます。 自暴自棄を通り越した2人が、熊本県人寮で過ごした学生時代を清算するため、一世一代のスタント映画の制作を決意して・・・

注目ポイント

特筆すべきは、濃密な世界観です。 寮の部屋や、祭りの際に行われる宴会芸、破滅的な宴会では、実際の寮とその住人の風景がそのまま切り取られており、そのさまざまな表情から、作品に非常に深い奥行きと、圧倒的な生々しさが生まれています。 とくに、年に一度の寮の祭りのシーンは、喜び、騒ぎ、泣き、暴れ、果てには眠り潰れる住人たちが、まったくリアルなままに映されており、その絵面のインパクトたるや、筆舌に尽くしがたいものがありました。実際に監督が寮の中で生活していたからこそ撮影できた、大変貴重なシーンだと思います。 登場人物の喜怒哀楽に共感できるエンターテインメント性の高い映画ですが、閉鎖的な寮で、苦しみつつも青春を謳歌する若者たちを描いた一種のドキュメンタリーとしても、大変すばらしい作品だと思います。 また、あまり映画について明るくない私なんぞが書くのも大変おこがましいのですが、 演出も相当に素晴らしいものであると思います。(実際に数々の映画賞をとっているので、間違っていないでしょう) ネタバレになるのであまり詳しくは書けませんが、あるシーンで入る画面カットの手法には、古典的な映像の流れの中にピリッとした斬新さがあり、みなさまもご覧になれば、きっと唸ってしまうのではないでしょうか。

放映スケジュール

2014-12-13追記:ポレポレ東中野での放映は終了しましたが、熊本での放映が企画されているそうです!

2014年10月26日現在、東京都中野区にある「ポレポレ東中野」で、2014年10月31日まで放映されているようです11月7日まで放映期間が延長されたそうです!おめでたい! 21:00開始なので、平日の仕事終わりにも観に行けます。ちなみに公開初日は超満員で、補助席に座布団席、立ち見客までおり、会場はパンパンでした。まだDVD化は予定されておらず、また人気のためチケットが取れないことも予想されるので、「ぜひとも観ておきたい」という方は、ポレポレ東中野公式サイトでスケジュールを確認して、お早めに観に行きましょう!

予告編

関連リンク

余談

舞台になった有斐学舎は、実は当サイト運営者である藤本が在籍していた寮でして、さらに監督の嶺豪一氏とは同学年。四年間、同じ寮で生活しておりました。撮影にも参加させてもらっており、飲み会のシーンや導入部などで何カットか映っていますので、お知り合いの方は是非探してみてくださいね。 (この投稿内に使用している画像は公式facebookページより引用させていただいています)