勉強になったビジネス書
2015年に、私の価値観に大きくインパクトを与えてくれたビジネス書を記録しておきます。本選びの参考にしていただければ幸いです。(私が手にとって読んだのが2015年というだけで、必ずしも出版年が2015というわけではありません。念のため。)
これは紹介したい、と思ったのが7冊のみだったので、1~7位までのランキングになります。まずは7位からどうぞ。
第7位:『直球勝負の会社』(著:出口治明)
ライフネット生命社を立ち上げられた出口治明氏の著作。立ち上げの際の背景やビジョンについて詳細に語られています。特殊な許認可が必要な、参入障壁が高いビジネスを開始する際には参考になると思います。
本音と建前の「建前」としての理念ではなく、崇高な理念を掲げ、回り道をせず直球勝負で勝負をしたらどうなるか。今後のライフネット生命社の動向が気になる本です。
第6位:『スタートアップ・バイブル』(著:アニス・ウッザマン)
スタートアップ、いわゆるベンチャー企業にとっての教科書を目指して作られた書籍。チームビルディング、製品設計、知財管理、マーケティング、資金調達、エグジットまで、企業活動におけるポイントが体系的にまとめられています。
個人事業や小さな企業を運営していて、迷った際に立ち返る本として有用です。
スタートアップ・バイブル シリコンバレー流・ベンチャー企業のつくりかた
第5位:『イギリス人アナリスト日本の国宝を守る』(著:デービッド・アトキンソン)
敏腕アナリストとしての経歴をもつ小西美術工藝社社長デービッド・アトキンソンの著作。歯に衣着せぬ正論で、日本の観光や文化財を守るための提言を行います。
「経営する立場の人は、先人から生き様を学ぶのもよいが、同じくらい数字に関して妥協しない姿勢を持ってほしい」といった言葉が印象的です。そのお手本になるような分析や実績が明確に、情熱的に語られます。文化や観光に関係する仕事をされる方には必ず参考になる部分があると思います。
第4位:『会社はこれからどうなるのか』(著:岩井克人)
2003年と少し前の経済本になりますが、2015年現在でも十分に通用する内容です。まず戦後の資本主義経済の現状について。
- 資本主義経済は、プロダクトの地域的、文脈的価値な差異を媒介することで拡大してきた。
- 長期的観点では差異を消滅させる、つまり市場を焼畑農業的に食い潰す結果になった。
- ゆえに、コモディティ商品を大量生産、大量消費していくビジネスは利益を生み出せなくなってきている。
現在のマクドナルドの苦しい状況がそれを表していると思います。
金と人の関係に関しては以下。
- 市場が減少したことで、「わかりやすく有望」な投資先がなくなってきてしまった。投資のための資金が余ってきている。
- またクラウドファンディングに代表されるように、ITの進化によって資金調達が容易になり、金を出す投資家の立場が相対的にパワーダウンしてきた。
- アイデアを生み出す力、それを市場に問うことができる業界内での信頼関係など、目に見えないパワーを持つ人材が金よりも貴重な時代になってきている。
まとめると以下のような具合でしょうか。
とにかく継続的に新しい価値提言、ニーズ喚起を行っていける組織づくりが大事。そのためにはそうした企業文化が必要。そしてそうした企業文化が、良い人材を獲得することにも繋がる。
会社はこれからどうなるのか (平凡社ライブラリー い 32-1)
第3位:『イシューからはじめよ―知的生産の「シンプルな本質」』(著:安宅和人)
脳科学の研究者からマッキンゼーのコンサルタントとして活躍する著者が仕事を効率よく進めるための方法をまとめた本。人によって理解が変わる言葉について、明確に定義しながら話を進めていくのが印象的。言葉を大事にしていることが伝わる本。内容もさることながら、「わかりやすく話す」ための参考になる部分が多くあります。
第2位:『ゼロ・トゥ・ワン―君はゼロから何を生み出せるか』(著:ピーター ティール)
「アジャイル」や「リーン・スタートアップ」と言われるような、悪く言えば「行き当たりばったり」ともとれるような起業ノウハウが語られる中、逆に「とにかく戦略を立てること」を主張する本。
論旨を要約すると、
- 競争が発生すると利益は消滅する
- ゆえに競争を避けること、独占市場を作ることが最も重要
- 競争を防ぐ設計が難しいリーン志向より、独占を見越した戦略志向を持つべき
- 「多くの人が信じていなくてあなただけが信じている隠れた真実」を事業化せよ
といった具合です。
ちなみに、こうした思想の真逆に位置する書籍『HARD THINGS』が奇しくも同年に発刊されています。私も購入していますが、どうにも合わず、こちらは積読状態になっています。
第1位:『ゆっくり、いそげ カフェから始める人を手段化しない経済』(著:影山 知明)
私の仕事観に大きく影響を与えてくれた本です。最高におすすめ。
そもそも、仕事は人を幸せにするためにあるもの、つまり人が目的で仕事は手段でしかないのに、プロフェッショナルとしての生き方を突き詰めると、仕事という目的のために人が手段に成り下がるという逆転現象が起きてしまっているのです。
この『ゆっくり、いそげ』は、こうした逆転現象に対する挑戦の記録でもあります。
著者である影山 知明氏は、カフェ「クルミドコーヒー」を経営していく中で、様々な課題にぶつかりつつも、人を手段化しないという理念に背かず、食べログでカフェ部門で一位になるほどの支持を受けるカフェにまで成長させました。
その経営方針には様々な気づきがあり、たとえば
- 損得だけで考えるような消費者的人格を刺激せず、「こんなにしてもらって悪いな」というような受贈者的人格に訴えかけること(=リピートを生む健全な負債感)
- 1商品の交換だけでは経済的に成立しない取引も、「複数車線での取引」によって成立させられる場合もあること
といったことが語られます。プロとしての生き方に疑問や限界を感じている方にはきっと貴重な気付きが得られると思いますので、ぜひ読んでみてください!
ゆっくり、いそげ ~カフェからはじめる人を手段化しない経済~
おわりに
以上、本選びの参考になりましたら幸いです。